本文へスキップ

研究紹介STUDY

屋井研究室の研究テーマは国土・都市計画,環境交通工学です.
その内容は,計画策定プロセス,住民参加,交通環境分析,航空政策,交通行動分析,交通事故分析,ITS(高度道路交通システム),みちづくり研究,都市鉄道計画など多岐にわたります.

最近の研究内容の紹介

航空管制に関する研究     
 近年のアジア地域の急激な経済成長などの影響によって世界的な航空需要は増加を続けており,将来的な航空需要の増加に対応するために,首都圏空港(羽田空港と成田空港)の機能強化を早急に図っていく必要があります.空港の容量を拡大する方法としては,滑走路の増設などハード面からの施策と航空管制を用いて航空交通流をマネジメントすることで容量拡大を行うソフト面からの施策の2種類があります.ハード面からの施策は効果が大きい反面コストや時間がかかるというデメリットがありますが,航空管制を用いたソフト面からの施策は,低コスト,導入しやすい,柔軟性に優れるなど多くのメリットがあります.
 海外では空港容量の拡大施策として,日本では行われていない先進的な管制運用方式が多数実施されており,実際に効果が認められた運用方式も存在しています.本研究室では現在,このような先進的運用方式を羽田空港に導入した場合の効果を容量や飛行時間,燃料消費量など様々な観点から定量的に分析することを長期的な目標としており,この目標を達成するためのツールとして管制官の指示アルゴリズムを組み込んだ空域シミュレータの開発を行っています.
都市の持続可能性アセスメントの開発に関する研究     

 日本の都市計画は,分野毎に縦割りで計画が策定され,分野横断的に評価する制度が確立していません.そこで神奈川県相模原市を対象に,地域の将来像を経済・社会・環境・安全・健康の視点から評価する制度を構築しています.GISを用いて都市を評価する指標を視覚化することで住民にわかりやすく共有し,オープンデータのみを用いてデータの説得力を高めます.都市計画により多くのステークホルダーが関われるように,また,都市計画の意思決定の一助となるような制度の確立を目指しています.

自転車シミュレータ開発と自転車走行ネットワークの安全性に関する研究
 自転車は日常に溶け込んだ手軽な交通手段であるばかりでなく,近年,環境にやさしい交通手段として期待され,サイクリングなどの運動としての目的のみでなく,通勤通学や買い物での利用など,日常生活においても広く利用されています.そのため,都市部では自転車が日常的に歩道空間を走行し,自転車と歩行者の錯綜・衝突事故などが急増しています.自転車と歩行者が衝突しても死亡事故にはつながりにくく軽視されてしまいがちですが,最近では死亡事故も発生するようになり,高齢化社会を迎える今後,その被害がますます大きくなることが予想されます.近年,道路交通法が改正され,自転車は車道を走行することが基本とされました.しかし,現状の車道整備のままで自転車に車道走行を強要すると自転車にとって危険であることから,近年,自転車走行空間の整備が進められています.しかし,多くの自転車利用者は「車道はこわい」という認識を強く持っているというのが現状です.また,自転車利用者はルールを守らずに事故を起こすケースも多々あり,安全教育の重要性も指摘されています.これらの課題解決に資するため,自転車シミュレータMoricsを用いて走行空間や運転挙動の安全性を分析しています.
本研究室では現在,多くの自転車シミュレータがこれまで課題としている夜間の自転車走行の再現性の向上や,高齢者を対象とした自転車走行の実態・自転車走行における意識調査など多方面に渡った研究を行い,安全教育向上へ向けた模索,現状の実態の把握などを行っています.

  Morics1Video


東南アジアの公共交通システム導入に関する研究        

東南アジアには,これからモータリゼーションを迎えようとする都市がまだいくつもあります.環境を悪化させないためには,乗用車ではなく公共交通サービスが提供されることが望ましいといえます.そこで,それらの都市に根付くバイクや乗り合いシステム(パラトランジットと呼びます)や東南アジアの文化に合う,公共交通のニーズやシステムについて,株式会社東芝,室町研究室(人間環境システム専攻),福田研究室(土木工学専攻)と共同で研究しています.


ドライビングシミュレーションシステムの開発と都市内地下高速道路の走行安全性分析      
大都市圏における環状道路等,整備の必要性が高い高速道路は未だ存在し,今後そういった新規高速道路を,既に高密度化された都市内において建設する場合には,周辺環境への影響等を考慮して地下構造にしなければ社会的合意形成を円滑に進めることができないと考えられます.実際,海外の事例を挙げると,フランスの環状高速道路A86の西側約10kmは,周辺の住環境,森林,歴史的建造物を保全するため,2本の地下トンネルで建設中です.しかし,トンネル内の走行は,空間的圧迫感や視認性の悪さなどからドライバーに大きな負担を与え,車両事故の被害も甚大となります.さらに都市内の地下構造高速道路となれば,これまでの山岳トンネルとは異なり,交通量が多いために他車との交錯も多くなり,また地上道路との接続による縦断勾配変化もきつくなることが予想され,その走行環境や安全性が危惧されます.今後高齢化も進み,道路走行環境の向上が一層求められる状況では,ドライバーに多くの負担をかけることが予想される都市内高速道路の走行環境や,道路交通の安全化の切り札として期待されているITS(高度道路交通システム)の効果を十分に検討する必要があります.そこで屋井研究室では,地下構造の都市内高速道路における走行環境,安全性を分析するための新たなドライビングシミュレーションシステム:MOVIC-T4(Moving Virtual Cockpit driving simulation system by Tokyo Tech & Trion for Tokyo highways)を設計開発し,各種安全施策の効果等を評価しています.

また,都市内地下道路では覚醒水準の低下現象がみられることが示唆されています.本研究室では,都市内地下道路の安全性を「交通事故の低減」という観点でとらえ,覚醒水準の低下が引き起こす事故の中でも車両1台,2台の事故よりも被害が大きいと考えられる,3台以上が絡む事故(多重衝突事故)に着目した研究を,MOVIC-T4を活用して行なっています.


Movic-T4
(Internet Explorer)


屋井研究室での以前の研究内容

広域交通計画における市民参画手法に関する研究(Public Involvement)  

たとえば…
計画手続の評価については評価主体や評価を行う段階,評価手法により様々なケースが想定され,対象となる計画手続の要件ごとに適切な形での評価が要求されると考えられます.PIプロセスは,行政と市民との対話によって成立するものであり,行政,市民,そしてプロセスを管理する中立機関によって評価されることが望ましいといえますが,市民による評価については関心や関与の程度が様々であることや,手続に対する評価と計画案自体に対する意識を分離することが困難であることなどから,評価抽出可能な項目や適切な評価抽出方法について検討が必要になります.そこで本研究室では,PIプロセス,及び計画プロセスの各要件に対する市民からの評価を抽出するための設問体系の検討・構築を行ない,市民による手続の評価の実行可能性を探っています.


交通マイクロシミュレーション      

【震災後の交通シミュレーション】
阪神・淡路大震災では,建築物の倒壊等の影響で交通容量の小さくなった道路ネットワークに様々な目的の車両が流入し,その結果,深刻な交通渋滞が発生,消火活動や救助活動,救援物資輸送活動などの応急対策が大きく阻害されてしまいました.震災後の道路状況,交通状況は非常に複雑で,どのような対策を採るべきかを検討することは難しいといえます.このような状況においては,震災後交通状況を詳細に表現した上で様々な施策の検討を可能とするシミュレーションシステムなどの施策検討ツールが有用であると考えられます.このような問題意識に基づき,本研究室では,マイクロシミュレーションシステムParamicsを活用して,震災後の交通問題に対する施策を検討しています.
現在は,道路閉塞危険度が比較的高いと予測される川崎市川崎区を対象として研究を行なっています.

【環境シミュレーション】(以前の研究)
近年,尼崎や川崎の公害訴訟に代表されるように,沿道の大気汚染(SPM,NOx等)が大きな問題となっています.国,自治体,公団等により沿道の大気環境の改善を図るため様々な取り組みがなされてきてはいますが,十分に改善されてきているとは言い難い状況です.そこで,屋井研究室では,交通ミクロシミュレータ「Paramics」を活用し,広域道路ネットワークにおいて車両1台1台の行動を再現し,大気汚染物質の排出量を予測,評価するシステム:ARTIST(Atmospheric and Regional Traffic Integration :A Simulation System of Tokyo Tech)を構築しています.また,特定路線の大型車を規制するような線的な沿道対策では,必ずしも被害地域の改善に十分対応できないことから,面的な対策が必要であると考えられます.例えば,首都高や阪神高速により試行されている環境ロードプライシングにより,住宅地から離れた湾岸線に高排出の大型車を誘導したとしても,気象条件によっては,大気の移流拡散により,湾岸線で発生した汚染物質が住宅地まで輸送され,結果的に十分な改善を図れない可能性もあるということです.そのような広域の気象条件の影響も考慮するために,屋井研究室と,同じく東工大の神田研究室(大気・水環境)の共同により研究を行っています.
対象地域は,川崎周辺の約30km四方, フィリピン共和国メトロマニラのMakati周辺,約4km四方です.

屋井研究室での研究をもっと詳しく知りたい方はこちら(作成:藤井拓朗,2007)



地方都市の公共交通の存続・中心市街地活性化に関する研究       

全国の地方部では,地域公共交通の利用者が減少し,その存続が危ぶまれるケースが増えています.自動車を主な移動手段とする地方都市では,中心市街地が衰退することにより.特に高齢化の進む過疎地においては,自動車に頼らず移動できることは,高齢者の生活上最低限必要な活動を支え,健康的な生活を営むのに欠かせません.そこで,中心市街地の活性化や地方都市の公共交通の存続について,住民の主体的な参画の観点から研究を行なっています.


自由回答の分類,関心の抽出に関する研究    

現在,我が国の国土行政は"コミュニケーション型国土行政"と称して,公共事業における国民との協働・共創を進めており,主要な取り組みとしてPI(Public Involvement)を位置づけています.PIとは,事業の計画段階から住民の声を聴き,計画策定に反映させるというもので,具体的な手法として,アンケート調査,FAX,電話,はがき等があります.近年,住民意見を直接表した自由回答方式が注目され,自由記述アンケートから道路に対するニーズや不満度を抽出する研究等も行われています.PIでは,どの手法を用いても,自由意見は最終的に「自由回答テキスト」となり,住民への公表や,計画プロセスにおける重要なデータとされます.しかし,それらの整理・分類法は未だ確立されていません.実際にPIを導入している"(仮称)横浜環状北西線"構想段階でも,現在までに4587件という大量な意見が集められ,それを人手で分類してきました.そのため,記述内容別の分類程度に留まっており,テキスト表現に含まれた住民の意図や関心に注目した分類はなされていません.しかし,PIにおいては住民の関心の所在を明確にし,それを行政だけでなく住民全体が認識することが重要です.そのためには,住民側から出される大量な自由意見を計画プロセスの中で埋没させないよう,各意見に秘められた人々の"関心"が何であるのかを効果的に抽出・分類する方法の確立が必要であり,また,PI手法を導入している行政側にとっても,膨大な意見を短時間で正しく理解し,整理した結果を的確に市民にフィードバックすることが求められています.そこで,本研究室では自然言語処理技術を援用し,「自由回答テキスト」に含まれる住民の関心を軸にしたテキストの自動分類に関して研究を行っています.



交通手段選択モデルにおける効用関数の非線形性の検証       

非集計行動モデルは交通需要予測やプロジェクト評価を行う際に様々な意味で重要な役割を担っており,その統計的推測は,実証分析上極めて重要な問題です.多くの理論・応用研究では,所要時間や費用などの説明変数に対して線形や対数線形の特定化を行った,比較的単純で取り扱いが簡単な効用関数が用いられてきており,また,航空の運行頻度や,鉄道の混雑率など,仮定が不確かでありながら,分析に用いている変数もあります.しかし,効用関数の特定化が適切ではない場合,誤ったインプリケーションが導かれる可能性もあります.そこで本研究室では,関数の形状にアプリオリな仮定を与えないノンパラメトリック回帰分析の手法に基づいて,非集計行動モデルにおける効用関数の非線形性の検証を行っています.



国内,国際航空市場における小型旅客機導入の可能性分析      

世界航空需要の平均的な伸び率が4〜5%であり,特にアジアではそれを上回る6〜8%の高い伸びが続いている中で,我が国の航空旅客需要も戦後著しい発展を遂げ,現在も国内線・国際線ともに高い需要の伸びを示しています.一方,国内線旅客需要の5割強が集中する羽田空港では,何度も容量拡張を行ってきたにもかかわらず,容量不足の現状は今でも変わっておらず,航空輸送の大きなボトルネックとなっています.これをこのまま放置しておくと,国際競争にも立ち遅れ,今後の我が国の発展に支障をきたすこともありえ,ボトルネックを解消するためには,大規模空港の整備,とりわけ需要が集中する首都圏空港整備を早急に進める必要があります.こうした現状を受け,羽田空港では平成13年12月に再拡張案が決まり,発着可能回数は年間27.5万回(離陸32回/時,着陸28回/時)から年間42.3万回(離陸・着陸40回/時)になる方針です.しかし,羽田空港を始めとする大空港の整備は,輸送効率・空港混雑等の理由により,小型機による低需要路線の運航(コミューター航空)を混雑空港(羽田・成田・伊丹・関空)から排除することにつながってきています.羽田空港では1999年時点で1便あたり平均223人乗っており,1便あたりの乗客数は世界最大です.「効率的な輸送」と引き換えに,乗客は便数・路線数ともに制限された劣悪なサービスを強いられてきたといえます.その後2000年2月に需給調整規制が撤廃され,完全自由市場となった今,競争は激化し,大手エアラインは独自の戦略の中で旅客のニーズに合わせた機材構成を指向することによって,路線によっては機材の小型化(ダウンサイジング)が進み,小型機の役割も増すと思われます.また小型機は大型機に比べて格段に騒音が少ないので,新規導入には比較的障害が少ないというメリットも存在します.こうした背景のもとで,今後首都圏空港を整備していくには,将来ビジョンを明確にするとともに,容量拡張や航空機材のサイズチェンジからくる頻度増加によって,どの主体がメリットを受けるかを明確にする必要があります.しかし航空機材のサイズチェンジはこれまでもエアライン独自の判断によって行われてきており,その判断基準は明らかになっていません.そこで屋井研究室では,まず我が国における航空機材の変遷の実態を運航実績から把握し,そして機材のサイズチェンジによって利用者の利便性がどのように変化するのかを明らかにしようとしています.


休日のアクティビティ分析および時間価値の推定    

交通施設の整備による便益は,時間短縮の効果が大きな割合を占めています.そのため,時間短縮の便益計算に用いる単位時間の価値を金銭で評価した時間価値が重要となっています.この時間価値の従来の算出方法の一つである所得接近法では,移動の短縮時間は労働に充てられるとして賃金率を用いてきましたが,これは本来,休日では成り立たないものと考えられます.そこで,休日では労働の制約がなく,自由時間において自分が行いたい様々なアクティビティを選択出来るため,もし移動時間が短縮して自由時間が増加すると,個人はその時間において自分が行いたいアクティビティをすると仮定をし,つまり,休日では移動時間短縮との代替関係にあるのは労働ではなく,個人が行うアクティビティにあるとして,休日の時間価値を算出するためのモデルを構築しています.

交通需要予測の不確実性に対する住民意識構造の分析    

公共事業計画の基礎となる交通需要予測に対して厳しい批判が寄せられている中,将来予測の不確実性を考慮した幅をもたせた予測の意義が認識されつつあります.しかし,その結果をどのように国民に提示し,社会的受容を獲得することができるかに関しての知見は得られていません.本研究では,計画策定時における幅をもたせた予測結果の提示方法や課題を明らかにするために,まず,交通需要予測が問題となった具体事例における住民意識構造を把握し,交通需要予測を巡る住民意識の構造化を図ることにより,住民の交通需要予測に対する認識を分析しています.また,構築した住民意識構造モデルの実証分析を通じて,幅をもたせた予測の受容可能性やその提示方法に対する考察を行っています.



ETC(ノンストップ自動料金収受システム)車載器の普及予測   

高速道路の料金所渋滞の解消を目指して,ETC(ノンストップ自動料金収受システム)が平成13 年から導入されています.ETCは単に料金所の渋滞を解消することのみが目的ではなく,対距離料金制(有料道路を走行した距離に応じて通行料金を変化させる.現在首都高などは料金収受の効率化等の理由から走行距離に関係なく一律の料金を課している)やロードプライシング(混雑料金や上述の環境ロードプライシング等)を導入し,効率的な道路運用管理をするためにも不可欠なデバイスとなります.しかし,ETC 車載器の普及率が非常に低く,多くのドライバーはETCのサービスを受けられない,また各種交通政策の効果が十分に発揮されないという現状です.利用者はETCのメリットを判断して独自に車載器を購入することになり,システム運用のパフォーマンスがユーザー側の車載器購入行動に影響を与え,また,その普及率がETCサービスのパフォーマンスに影響を与えます.今後,道路交通環境を改善するためには,ETC車載器の普及が必要不可欠であり,その普及を促進するための調査,研究を,現在屋井研究室で行っています.


選択行動モデルへの社会的相互作用の導入可能性   

社会心理学や社会学では,「準拠集団が個々の構成員の行動に及ぼす影響(社会的相互作用)は,個人の行動を規定する要因として無視できない」という認識のもとで多くの研究がおこなわれてきました.そこでは,人はどのような状況下で他者の影響を受け易いかが分析されており,多様な環境下で,社会的相互作用が個人の行動に有意に影響を及ぼすことが確認されています.土木計画が対象とする分析事例にも,社会的ジレンマ構造を有する自動車利用自粛行動や違法駐輪行動,上述のETC車載器の購買行動をはじめとして,社会的相互作用が行動に与える影響が大きいと思われるものも多数あります.社会的相互作用を選択行動モデルのフレームに導入し,どのような相互作用が生じているのかを実証的に考察できるようになれば,従来とは異なる行動予測や政策評価が可能になることが期待され,交通行動分析をはじめとする行動モデリングに新たな示唆を与え得ると思われます.そこで現在,選択行動モデルへ社会的相互作用を導入する方法論を研究しています.



走行支援システム(AHS)の効果分析    

道路交通の安全性を飛躍的に向上させるため,ITS技術を活用し,ドライバーへ走行支援情報を提供するシステムに関する研究開発が盛んにおこなわれています.これらサービスは,事故時の被害を軽減するパッシブセーフティとは異なり,事故自体を未然に防ぐアクティブセーフティを達成するものです.一部のサービスが既に実用段階まで進められており,近年中に試験的ではありますが実際の道路上でいくつかのシステムが導入されます.サービス内容としては,前方障害物衝突防止支援,車線逸脱防止支援などが考えられていますが,実際には提供情報の内容や,提供方法,デバイスの普及,責任の所在に関する問題など,未だ多数の問題を抱えています.屋井研究室でも,これら走行支援システムに関する研究を,走行実験,シミュレーション・シミュレーター実験等からおこなっています.


集客施設周辺,交差点等の局所的交通環境の改善施策評価   

大型ショッピングセンターや鉄道駅周辺,アミューズメント施設などの集客施設には多くの人が集まり,またそれらの人が利用する様々な交通機関も存在します.施設に入る車両や乗客待ちのタクシー,バスが原因となって渋滞が発生するなど,それらの人や交通機関によって周辺交通環境は大きな影響を受けます.これら局所的な渋滞がさらに周辺地域の交通に大きな影響を与えます.従って,これら集客施設を整備する際には,周辺の交通環境に与える影響も事前に評価し,渋滞等の諸問題が生じないように,付属する交通施設も一体で整備する必要,責任があります.このような集客施設の交通環境に与える影響の分析ツールや評価方法に関して研究をおこなっています.


運転以外のタスクがドライバーに与える影響の分析    

自動車運転時には携帯電話の使用が法的に禁止されていますが,両手を自由に使えるハンズフリー装置を使用すれば運転中でも携帯電話を使用することが許可されています.しかし見えない相手と会話をしていること自体が運転作業に何らかの影響を与え,予期せぬ事故が起こる可能性があるという報告もあります.携帯電話のみならず,カーナビや今後導入されてゆくであろうITS技術による走行支援システムなどにも,そういった負の影響があることが予想されます.そのため交通心理学,人間工学,大脳生理学等の分野から,そういった運転以外のタスクの影響を分析しています.